「機動戦士ガンダムOO」第15話

クーデターの首謀者の軍人さんが、面白いことを言ったね。「軍隊は国益と国民を守る……誤った政治の元で軍隊は正しく機能しない」いや全くその通り。ここまではいいが、問題はその次。「私は正しき軍隊の中で、軍人として生きたいのだよ」はぁ?正しき軍隊って何だよ。
民主国家における軍隊はシビリアンコントロール、つまり国民の代表たる政府によって支配される。だからどんなに愚劣な政府ではあっても、国民の代表たる政府を、軍隊が倒すなんてあってはならない。そこに民主国家の軍人の苦悩がある。銀河英雄伝説は、そこを非常によく描いていて(多少シビリアンコントロールに対する誤解はあるが)、ヤン・ウェンリーは、政府が選挙の票欲しさに愚劣な出兵を決めても、それに従い、またそのような政府を倒して清潔な政治を行おうとクーデターを起こした一部軍人に対して、現政府を守るために戦い、その行動が矛盾に満ちていることを分かって苦悩しながらも、民主国家における軍人としての筋を通したわけで。
つまり、民主国家において、悪政を正すためにクーデターという手段に訴えるのは、民主国家の軍人としての自殺に他ならない。あくまで民主国家のルールに従って、悪政を正す方法を考えるべき。もちろん、自らの国民に武器を向けるよう命令するような政府なら、いよいよ仕方が無いのでクーデターというのも有りかもしれないが、だからこそ、そのような究極の状況でもない限り、民主国家の軍人はそれらしく振舞うべき。
そういう苦悩を描いているなら、ダブルオーも物語に深みが出るんだろうけど、全くそういうのが無いから、どこまでも薄っぺらい。言葉に重みが無い。「正しき軍隊」って何だろうと悩んで悩んで悩みぬいて、じゃあクーデターしかもうないと思い詰めるのなら、共感もできようが、「正しき軍隊」などと言葉だけで軽く言われたんじゃあ、底の浅さが見えるだけで失笑するね。
リアルな戦争ものがいかに難しいか。本当に戦争を研究したことがないから、こういう脚本しか書けないんだろうね。これも日本の教育における念仏平和主義の賜物かねぇ。