着想と論理は必ずしも結びつかない

ゴルゴ31さんのリンクから、面白い記事を見つけました。

・少女を家畜にしてきたインキュベーターと『ミノタウロスの皿』
http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20110831
http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20110901
ミノタウロスの皿」というのは、藤子・F・不二雄先生の描かれたブラックなSFショートストーリー漫画。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%9A%BF
QBの論理と、ミノタウロスの皿を比較した着眼点は面白いです。
ただし、後半の論理展開には首を傾けざるを得ません。
たとえば、死を美徳とする文化として大日本帝国をあげていますが、サヨクによる嘘歴史の丸呑みで間違ってます。
日本帝国軍が玉砕戦法を採ったのは、戦況が悪化して対抗手段が無くなって以降であり、戦術的に死を尊んでいたというのは嘘です。
帝国陸軍の得意としていた戦法は、夜間白兵突撃であり、これは損失を抑えて勝利できる合理的な戦法でした。
(ただし、戦術というのは状況によって柔軟に用いるものであり、帝国陸軍の愚かだったのは、どんな時でも白兵突撃一本槍だった点です。ゆえに、機関銃で固めた防御陣地を構築したアメリカ軍に、むやみに突撃を繰り返すという愚を犯しました)
さらに、「生きて虜囚の辱めを受けるべからず」といった戦陣訓(向こうさんは「戦争」訓と書いてますが間違い)を、根拠として挙げられてますが、これも典型的な戦後サヨク教育の害毒。
あれは日本帝国軍を悪の軍隊として貶めるため、わざと一文だけを抜き出して強調しており、元々の全文はこうなっています。
・「本訓 其の二」の「第八 名を惜しむ」(Wikiより引用)
恥を知る者は強し。常に郷党(きょうとう)家門の面目を思ひ、愈々(いよいよ)奮励(ふんれい)してその期待に答ふべし、生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿(なか)れ
つまり、家や一族を辱めることなく、覚悟を決めて戦う者は強い。だからそのような覚悟をして戦いに臨めという覚悟のすすめであり、捕まったら死ねという命令だというのは、真っ赤な嘘だということがわかります。
(ちなみに捕虜になった者がベラベラ秘密をしゃべったのは、日本帝国軍では捕虜になった際の情報秘匿について、何の教育も施してなかったからです)
そして何より、この文中で述べられているミノアの名誉というのは、死そのものではなく牛たちに食べられることであり、死は結果でしかありません。
紹介例のアステカの文化しかり。
文化の違いという論点は正しいのですが、その論拠たる「死を美徳とする」というのは、間違っています。
ミノアにしろ、アステカの戦士にしろ、「○○のためになる」という部分に価値を見出しているのであり、結果としての死にはさして重要性を見出していないのです。
ですから、彼らはもし意味のない死を強要されたら、激しく抵抗するでしょう。
文化の違いとは、「○○のため」の部分が異なることであり、キリストのためと、アステカの神のためというのが違えば、もう理解困難になるのです。
そういった基本理論が間違っているため、後半の論理展開は支離滅裂になっています。
現代社会が死から遠ざかった位置で快楽だけを享受するシステムになっている点と、文化の違いはまったく異なる事柄です。(前者は社会学、後者は文化人類学の範疇)
QBが提示しているのは、そういう現代社会の矛盾であり、誰にとっても直視しがたい真実なのです。
ゆえにたちが悪い。
それに対してミノタウロスの皿が秀逸なのは、表向き文化の違いを強調しながら、実は現代社会の矛盾を抉り出している点であり、異なる次元のものを結び合わせた藤子・F・不二雄先生は、さすがだと思います。
このように、論じるべき点について示した根拠の間違いからか、結論部分にかけてさらに論理がメチャクチャになっていきます。
QBは感情が無いのですから、どのような感情も持ちうるはずがないのに、「羨ましい」「愉悦の感覚」などと感情をQBの行動原理として挙げています。
しかもそれらは感情ではなく、三大欲求に近いものだとコメント欄で書かれていますが、ならばどのようにQBにとって、それらが三大欲求と同じであるのかの論理的説明がありません。
肝心な結論部分において、何の論理もなくQBの「愉悦の感覚」を人の三大欲求と同じと定義されても、前半部分と繋がりもありませんし、論理構成が支離滅裂です。
以前もこのブログ主は、さやかと杏子を認知障害による自殺だと断定して、そのあまりにも乱暴な医学用語の使用を他の方が指摘していましたが、今回もそんな感じでメチャクチャだと思いました。
目の付け所はいいんですけどね…。