「けいおん!!」第20話

もはや神回という言葉すら生ぬるい。
学園祭2日目、いよいよ唯たちHTTの公演。
さわちゃんのTシャツサプライズや、新曲の披露などの見せ場もいいが、やはり丁寧に作りこまれたけいおんの世界観が、この学園祭の舞台に凝縮している感じ。
クラスメイトのモブ一人一人を設定して、さりげなく絡めていたここまでの積み上げが、唯たちを応援するクラスメイトという、ありきたりな構図をもの凄く生きたものに変化させている。
そして演奏する唯たちの描写も秀逸。
舞台前の緊張感、MCでの唯の暴走、演奏での頑張りなど、何気なく見えるシーンに凄い力が宿っている。
本当に唯たちの三年間の活動のすべてが、この演奏に込められているんだというのが感じられる。
これだけでも感動的なのに、さらにその上を行ってくれた。
すべてが終わって部室で惚ける5人。
口々にライブの成功を祝い、今後何をしようかと言い合う。
クリスマス、初詣、新勧ライブ、夏合宿…。
でも楽しそうに語る彼女たちは涙声。
そう、もう彼女たちは卒業なんだよね。
梓を除く4人は、来年の3月で卒業。だから来年の新勧ライブも夏合宿も無い。
にもかかわらず、来年のことを言い、律自らが「次はないない」と否定したのは、自らの気持ちを整理するためか。
ムギの「ヤダヤダ!」という泣き声が、彼女たちの気持ちを何より代弁している気がする。
そして泣きじゃくる唯たち。
何だろうね、この喪失感は。走り続けてきて、ゴールした達成感と同時に、全てが終わったという空虚な感じ。
祭りの後とでも言うのだろうか。
けいおんのことを、ただの萌えアニメだの、中身が無いだの、悪口を言う人間がいるが、そういう人たちは、感受性の低い実に不幸な人間だと思うね。
一期からけいおんを応援してきたファンにとって、この回は本当に感慨深く、唯たちと最高にシンクロできた回だった。
そしてそれを為さしめたのは、間違いなくけいおんの高度な演出と綿密な世界観(日常を日常らしく見せるのも、仮想世界を設定するのと同様に手間のかかるものだ)なんだよね。
受け手にこれだけの一体感と感動を与えてくれたけいおんは、間違いなく偉大な作品。
その頂点とも言える今話は、神回を超えた神回だった。